嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
私……このまま薫さんと結ばれるのかな。
さっきまで部屋でめちゃくちゃ気を抜いて、一日の終わりをホッと過ごしてたのに。

少しだけ冷静さを取り戻した頭に浮かんだのは、さっきまで部屋で考えていたお母さんの顔だった。


『誰よりも、一華の幸せを願っているからね』


私の幸せは、家族が幸せでいることだよ、お母さん。
それなのにお母さんに嘘吐いて、なにやってるんだろう、私……。


「焦らしてる?」


無意識で、体を左右によじったり、パジャマの裾を下ろそうと頑張ってい私に、薫さんが色気を宿した声で言う。


「逆効果だよ。恥ずかしがってる顔も、興奮するから」
「……っ」
「可愛いよ、一華」


でも、好きになったりはしないんだよね。
そういう感情は必要ないんだよね。

抱かれても、一緒にご飯食べても、一生。


『幸せになってね、一華』


それってすごく虚しい。

離れて暮らす家族の幸せを願って、私は私を利用価値のあるモノとしか思ってない男のギャップに時々ときめいたり、ドン底に突き落とされたりして。

一生暮らすなんて。

悲しいよ……。


「一華?」


顔を覗き込んだ薫さんの表情が、滲んで揺らめいて見えた。


「わ、たし……」
「……一華」


私は自分が泣いていることに気がついて、とても惨めで、悲しくて、安心して。
なんだかそういう複雑な感情が交錯し、余計に鼻がつんと痛くなってきた。


「わ、私……ごめんなさい……っ」
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