嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~



それから数日経った、週末。

私はいつもより時間をかけてメイクした。
といっても、世間一般のステキ女子に比べたら短い方だと思うんだけど、出勤時がすっぴんに近いナチュラルメイクだから、今日はそれよりは幾らかマシってほどかもしれない。

髪も少しコテで巻いて、ツイードのスカートに白いブラウスに着替える。
これは忙しいお母さんの代わりに風太の入学式に出たときに着た服だった。


「あれ? なんか今日はいつもと違う?」


自室を出ると、薫さんが目ざとく濃いメイクに気づき、面白がるような興味深げな表情で私の顔を覗き込んだ。


「一応、櫻葉化粧品の新作です」


高かったから躊躇したんだけど、グループトップのお父様にお会いするんだから、と気合いを入れた。


「俺はビューティー部門については疎いんだけど、こうして一華が使ってくれたら勉強になっていいかもな」
「そんな……」


私もそこまで詳しいわけじゃないから、期待されると荷が重い。


「だけど、そんなに気を遣う必要はないよ。そろそろ長瀬が迎えに来る頃だな」


薫さんは腕時計に目を落とした。

長瀬さんが運転する車で向かったのは、高級住宅街の中でも一際広い敷地を有する洋館、櫻葉邸。

後部座席で私は何度も深呼吸をし、苦しいくらい激しくなる動悸を抑えようと試みたけどダメだった。

今更なんだけど、お父様に紹介するのが私で大丈夫なのだろうか。
薫さんならもっといいところのお嬢様とか、モデルさんみたいに美しい女性の方が良かったんじゃないか、というプレッシャーに押し潰されそうだった。
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