嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「さっきのドレス、本当によく似合ってた。会場にいる誰よりも綺麗だったよ」


甘い言葉も忘れない。
本当に抜かりない。

契約のためなら、好きでもない女性にもこんなに優しくできるんだ。

本当は、ずっと心から思ってる人がいるのに……。


「こ、ここでは、演技しなくていいんじゃないですか?」


気がつくと、私は薫さんの手を引き離していた。
つっけんどんな言い方になってしまったんじゃないかと即座に後悔する。


「一華?」
「あ、その……、だってほら! 誰も見てませんから。婚約者の振りをしなくてもいいんじゃないかなって、思って……すみません……」


一歩ずつじりじりと後退する。

息が浅くて、苦しくなる。
なんとか呼吸を正常にコントロールしようとすればするほど、気持ちが焦ってしまう。


「まあ、それもそうだね」


私が振り払った手を浮かせ、薫さんは小さく呟いた。




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