ポルターガイスト~封じられた扉~
それに今日はもうどこかへ行ってしまっている。


あたしはそっとベッドへ近づいた。


この部屋で独りぼっちで、耳を塞いでいた亜香里ちゃんのことを考えてみる。


他の部屋から聞こえて来る楽しそうな笑い声に、亜香里ちゃんの小さな胸はどれだけ木津付いていただろうか。


「亜香里ちゃん……」


あたしは呟いて、ベッドに手を置いた。


ここはホコリが積もっていなくて、心地い手触りだ。


「寂しかったんだよね?」


亜香里ちゃんの気持ちが少しでも楽になるように手伝いたい。


それで、すべてが終わるなら……。


ベッドに触れている手に少し体重をかけた、その瞬間だった。


バリッ!と音がしてマットのシーツが裂け、そこから黒く変色した手が現れたのだ。


「キャアアア!」


悲鳴を上げて身をよけようとしたが、遅かった。


折れそうに細いその手はあたしの右手首をガッチリと掴んだのだ。
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