溺愛アフロディーテ 地中海の風に抱かれて
「じゃあ、二点目を決めたら、俺の言うことをなんでも聞くってことでいいな?」

 一点目の約束だってしてないのに、何よそれ。

「そんな約束はできません」

「トリプレッタ、つまり三点目のハットトリックなら俺の女になれ。君はミケーレを裏切るんだ」

 彼は一方的に話を進めてしまう。

「やっぱり止めてください。これ以上、あなたとお話しすることは……」

「つきあってくれ」

 え?

「俺とつきあってくれ」

 つきあってくれ……って。

 フェラーリが減速する。

 ほとんど止まるくらいの速度まで落ちたところで、ゆっくりと道路脇のホテルエントランスに向かって向きを変えた。

 車高が低いから下をこすらないように注意しなければならないのだろう。

「サッカー選手なんてみんなチャラいと思ってるんだろ」

 ええ、そうでしょうとも。

 ゆっくりと車をエントランス正面まで進めながら彼が私の顔をのぞき込む。

「その通りさ」

 そういうところがまさにチャラいんじゃないの?

「いいだろ。あいつがあんたを捨てたんだ。今さら義理立てすることはないだろう」

「だからって、あなたとつきあう義理もありません」

「あるさ」

 どうして?

「俺は明日ゴールを決める。そしたら俺につきあってくれるって約束だろ」

「だったら、三点決めて下さい。そしたらミケーレを裏切ってあなたのものになります」

 車が正面に止まると待ち構えていたホテルマンがドアを開けてくれた。

 思わず、よっこいしょと言いそうになりながらなんとかフェラーリから脱出できた。

 さっさと外に出てきていた彼がそんな私に手を差し出しながらウィンクをした。

「言っただろ」

 何が?

「俺は占い師だって。あんたはミケーレを裏切るさ」

 そして、それは本当に彼の言う通りになった。

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