青く薫る





 彼女をはじめて見たのは去年の10月。あたしが所属するアイドルグループ「檸檬女学園」の1期生最終オーディション会場で、彼女は異質だった。運動部みたいなショートカットに、焼けた肌。クリップで前髪を留めた生えっぱなし眉丸出しのノーメイク。

 およそあたしたちの仲間になるとは思えないそんな見た目で、その上、ダンスも歌も可愛らしさとはまるで無縁で。最初は、なにしに来たんだろう、なんて不格好なんだろうと思った。

 それなのになぜか目が離せなかった。番号ごとに固められた1ダースの群舞の中、手足をぶんぶんと振り回し踊る彼女は、ある意味ではとても目立ってた。でもあたしが目を離せなかったのは、そんな理由じゃなかった。

 オーディションは、その場で全員同じ振り付けを与えられて同時に踊る。そんな中で彼女は、他の子たちよりコンマワンテンポ早く次の動きに移ってた。躊躇なくジャストのタイミング。それはつまり、振り付けを完全に記憶してる証拠。彼女が踊ってるあいだじゅう、曲も、他の子も、会場の空気さえも、まるで全部を率いるみたいで、なにもかもが彼女の後ろにあるように見えた。決してダンスが上手いわけでもなく、まして彼女は後ろの列だったのに。

 まるで、命そのものがヒトの形をして躍ってるみたいだった。生を、こんなに見せつけられる踊りを、あたしは見たことがなくて、息をするのを忘れるほどに見続けた。喉がカラカラに乾いて、なんだか変な汗をかいていたのを憶えてる。彼女からほとばしる汗が全部止まってみえた。それほどまでに彼女だけが――


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