アナタと、キスと、銃声と。
俺の答えに組長は目を見開いた。
驚いた顔。
この人は今でも、後悔している。
あの日。
10歳だった俺を1人にしたこと。
二度と、両親に会えなくしたことを。
神崎組。
俺の父親が立ち上げた組だった。
1代で大きくし、白鷺組とは対立関係にあった。
ある事件で、この2つの組が激しく衝突した。
雪が降る、寒い夜のことだった。
家の中の騒がしさに、目を覚まし父さんと母さんのいる部屋に行った。
そのに広がっていたのは。
目を、覆い隠したくなる現実。
夢ならいいのに。
2人はすでに冷たくなっていた。
足元に落ちていた拳銃を手に取り、部屋の中にいた人物に向けた。
「…せがれがいたとはな」
そう、小さく呟いた。
その人の来ていた服は、血まみれだった。
ゆっくりと、俺に近づいてくる。
拳銃を持つ手は震えていた。