死者の舞踏〜最期のメッセージ〜
公演が終わるのは、舞台に魅了されていた藍にとっては一瞬のような出来事だった。スポットライトが消え、もう一度ブザーが鳴れば現実の世界に戻される。

「素敵でしたね!俺、初めてバレエを見ましたけどまた見に行きたいです!」

大河が笑顔で藍に話しかける。藍も「ええ、とても素敵だったわ」と大きく頷いた。その時、如月刑事が呟く。

「だが、このパンフレットの表紙を飾っている男は舞台にいなかったな……」

「そう言えばそうね……。王子役となっていたはずなのに、代役が舞台に立っていたわ」

「きっと体調が悪かったとかですよ。たまたまですって」

考え込む藍と如月刑事に、大河が明るく言う。確かにそうか、と如月刑事は考えるのをやめ、「車を文化会館の前まで持ってくる」と藍に告げて出て行った。

「大河くん、どうやって帰るつもりなの?」

「バスで帰りますよ!でも、藍さんを一人にはできませんから今はナイトとしてそばにいさせてください」
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