番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 椋は、また大きくため息をついた。
 地毛が赤毛のように明るい茶髪の男は、垂れ目の目尻を更に下げて、ニッコリと微笑んでいる。この男の名前は、栗林誠(くりばやしまこと)で、先日から椋の部下になったのだ。
 まだ警察に戻ってきたばかりだというのに、何故部下がつくのか。疑問に思い抗議すると、どうやらあの滝川が仕組んだ事らしい。
 滝川が本部の人間で、役職も高い。なかなか会えないので、電話をしてみると「おまえが勝手に辞めたのと、檜山を調べ回ってた罰だ」と、言われてしまい何も言えなかった。
 滝川にはやはり敵わないようだ。


 「俺、絶対に鑑先輩の下につきたいと思って、上司にお願いしたんです」
 「…………なんで、そんな事を………」
 「だって、出戻りだけどかなりエリートだって聞きましたし、後輩からは根強い人気で辞めるときは凄かったようですし、奥さんはかなりの美人だって聞きました」
 「なんだ……その噂は………」


 興奮気味に言う誠の話を聞いて、鑑は呆れた声をあげた。
 確かに後輩からは慕われていたようで、辞めるときはかなりの人から声を掛けられ、泣かれた事もあった。それを思い出してたが、逆に先輩からは先に出世をしたとして煙たがられたものだった。そちらの噂を誠は知らなかったようだった。
 そして、花霞を知っているのはあの事件に顔を出した人ぐらいだろう。特に滝川が怪しいと思った。



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