番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「花霞さん。偶然ですね」
「そうですね。蛍くんもお休みなんですか?」
「はい。初めて入ったパン屋さんなんですけど、どれも美味しそうで迷ってました」
「ここのパンはおいしいよ」
「そうなんですか!それは楽しみです」
蛍と花霞はそれぞれにパンを選んでから店を出た。蛍は気になるものが多すぎたのか、大きめの袋に入ったパンを嬉しそうに持っていた。
「沢山買いましたね」
「はい!今からから楽しみです…………。あの、花霞さん。お昼御飯はまだですか?」
「まだですよ」
「………花霞がよかったら………公園で一緒に食べませんか?お話したいこともあるので」
蛍の提案に、花霞は迷ってしまった。
公園でパンというのも、涼しくなってきた今はとても楽しそうだとは思う。けれど、花霞は結婚しているのだ。それなのに、他の男性の2人でご飯を食べるのはいいのだろうか。
そんな風に考えてしまう。
花霞には全くやましい考えはないし、蛍も趣味仲間として誘っているのだとわかる。けれど、椋が女の人と2人でお茶をしているのを見てモヤモヤしていたのだ。
それを自分もやってしまっていいのかとも思ってしまう。
けれど、彼が話したいことは何なのか。
花霞は何かの相談だとは思っていた。
せっかく花を好きになってくれたのだから。
そして、誰かが悩んでいるならば。その気持ちが勝った。
「外で食べるのもいいですね。ぜひ」
「っっ!本当ですか?じゃあ、ドリンク買いにいきましょう」
蛍は満面の笑みで、パンの袋を揺らしながら歩き始めた。
花の事を聞きたいのだろうか。
自分に聞いてくるのはそれしかない。
彼が今どんな事を気にしているのか。心配にはなってしまうけれど、まずは2人で空腹をなんとかしなければいけないようだ。
花霞は蛍の後ろを見つめながら、思わず微笑んでしまった。