番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 「ただいま、花霞ちゃん」


 すると、いつの間にか帰ってきていたスーツ姿の椋がリビングに顔を出した。


 「あ………ごめんなさい。全然気づかなくて!」
 

 花霞は慌てて立ち上がろうとしたけれど、「いいよ。そのままで」と言って、花霞の隣に座った。
 

 「集中してたんでしょ?」
 「うん………次のブーケ教室の事考えてたの」
 「そうか。頑張ってるね」


 椋は花霞が書き込んでいたノートを見て、何故か嬉しそうに微笑んだ。


 「おかえりない、椋さん」
 「うん。約束通り早めに帰ってきたよ」


 朝とは違う短いキスをする。
 それでも今朝の甘いキスを思い出してしまい、花霞はすぐに目が潤んできてしまった。
 それに気づいた椋はクククッと笑い、「夜まで我慢して」と、言ったので花霞は真っ赤になってしまう。


 「今日はずっと勉強してたの?」
 「ううん。午前中はおうちの事して、お昼にパン食べたくなったからお出掛けしたよ」
 「いつものパン屋?花霞ちゃんは本当に好きだね」
 「うん!そこでお店の常連さんに会ったから、一緒に公園でパン食べたよ。外で食べるるのもおいしいねー」
 「よかった。楽しかったみたいで」


 急に仕事になってしまい、椋は心配していたのかもしれない。ホッとした様子で微笑み、花霞の話を聞いていた。

 
 「蛍くんがね、私のブーケ教室にも来てくれることになったの。また、生徒さんが増えたから、やる気になったんだよ!」
 「えっ………常連さんって男の人なの?」
 「うん。若い男の子なんだけど、お花が好きになったなんて珍しいけど嬉しいよね」
 「そうだね………珍しいね………」


 花霞はそう言うと、にっこり微笑んで花図鑑のラベンダーのページを見つめる。
 それを椋はじーっと見つめていた。


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