若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
とにかく急なことだったのである。

『羽原、パスポートは持ってるよな?』
ボスにそう聞かれたのは、向葵を空港で見送って事務所に戻った時だった。

『はい? ありますが?』
『なら良かった。フランスに飛んでもらうぞ』

『え? ええ? 今見送ってきたばかりですが、何かあったんですか?』
『いや。せっかくの結婚式なのに知り合いがいないのは、彼女も心細いだろうということだそうだ。ネットがあれば仕事はできるだろう? 向こうでできない仕事は直ちに谷村に引き継げ俺から言ってある。早速準備しろ』

結婚式も初耳だったが、とにかく月井家の仕事は最優先というボスに急かされて、必死に仕事のスケジュールを組み直し、取るものもとりあえずという勢いで日本を出発したのである。

矢神はにっこりと微笑む。
「お待ちしておりました」

「お出迎えありがとうございます。向葵さんは?」

「着替えも済んで、今は部屋で待機されています」
佳織の荷物を持った矢神はどうぞこちらへと歩きはじめた。

「早速ですが時間があまりありませんので、お着替えを。マリーが用意したドレスがあります。美容師には部屋に行くよう伝えますね」

「何からなにまで、すみません」

「いいえ、無理を言っているのはこちらですからお気遣いなく」
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