若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
――なるほどこれが本物のプロの仕事なのか。
息を呑むほど感動しながら、佳織は鏡を覗きこんだ。
鏡に映っているのは自分のはずではあるが、五割増しの美人になっている。
そのことを確かめるように指先で軽く頬を触ってみたり角度を変えてみたりしていると、後ろからメイクアップアーチストが佳織の顔に自分の顔を並べて「ドウデスカ?」と片言の日本語で聞いてきた。
どうですかどころの話ではない。目や鼻の位置が変わらないだけで、もはや別人である。
佳織は大げさなほど感心してみせた。
「トレビヤン!」
どことなく女性的なメイクアップアーチストの彼は、満足そうに肩をすくめ、にっこり微笑んで鏡の中の佳織にウインクをしてから、佳織の首に掛けてあったケープを外して、クルリと椅子を回転させた。
フランス語が堪能で、彼と独占契約できるだけのお金があったらよかったのにと、心から残念に思いながら佳織は席から立った。それが無理でもせめてメイクのコツだけでも教えてもらえたらいいのだけれど、いまはそんな時間はない。
名残惜しさに後ろ髪を引かれる思いであらためて礼を言い、急ぎ足で部屋を出た。
開始まであと五分。
式が行われるのは中庭である。