若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
「ええ」
「あのカフェは、女性に人気のようですね」

向葵とふたりでランチをすることは伝えたかもしれないが、どこでまでは絶対に言っていない。今日のカフェは歩きながら決めたのだから。

「とても美味しかったです。私たちを見かけたのですか?」

――まさか、彼女を見張っているとか?
背中にヒヤリと冷たいものが走った。

月井夕翔には運転手券ガードマンが付いている。プライベートまではよく知らないが、彼が呼べばすぐに駆け付けられる距離に護衛がいてもおかしくはないだろう。

となればその妻である彼女にも、付かず離れずの距離に護衛がいるということか?

「そんなに難しい顔をしないでください。通りかかったのですよ、たまたまね」

「たまたま?」
「ええ。たまたまです。で? 向葵さんはどんなご様子ですか?」

「元気ですよ。ご覧になった通り、すっかり綺麗になって相変わらず幸せそうです」

矢神は「それはよかった」と言ってコーヒーカップに手を伸ばす。

その仕草をちらりと見ながら、この胸に抱えているやるせない思いを言ってみるべきか、言わざるべきかと、佳織はしばし考えた。
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