若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
そう言いながら夕翔は、少し食べただけのケーキを向葵に差し出す。
見れば矢神も同じことをしていた。

向葵と佳織は呆れたように目を合わせて、クスッと笑う。

『全く男どもは、お祝いのケーキが食べられないなんて、これじゃあ自分のために用意するようなものね』
『しょーがないですね』

クスッ。

「じゃ、ありがたく頂きます」
「頂きまーす」

ほぼふたり分のケーキを食べながら、このケーキの味を一生忘れることはないと向葵は思った。

酸っぱくて、ちょっと苦くて、とっても甘い。

幸せに味をつけるとしたら、きっとこんな味なんだろう。

――ね? 夕翔さん。

向葵のそんな声が聞こえたかのように、夕翔はにっこりと微笑んだ。



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