愛さずにはいられない
仁は不意に奈央を抱きしめた。

まだ過去から抜け出せずに、過去の悲しみにとらわれている奈央が仁は心配で仕方ない。
できればずっと自分の腕の中で守っていたい。支えたい。そしていつか・・・この悲しみから奈央を解放してあげたい。
奈央の小さな体を抱きしめながら仁は思った。

不意に抱きしめられた奈央は仁のぬくもりに自分自身の心が落ち着くことを感じていた。
カメラマンの男に腕をつかまれたときの嫌悪感は一切感じない。むしろこのまま眠ってしまいたくなるような心地よさに奈央は自分の気持ちが見えなかった。



「エネルギー充電!」
仁はそう言って奈央の体を離すと「じゃぁな」と奈央のアパートの前で奈央に手を振り帰っていった。

奈央は自分の部屋に入りいつものように3人の映る写真に話しかける。
「ただいま・・・」
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