バッドジンクス×シュガーラバー
「この俺が──なんとも思っていない女にここまですると、本気で思ってるのか?」



背中からテーブルに乗り上げかけている私の左頬に、久浦部長がするりと手のひらを這わせた。

私は「え」、と声に出さず、唇を動かす。

『この状況』? 『なんとも思ってない女に』?

久浦部長の右手は、依然として私の頬を撫でている。

その手が顎先まで下りてきて……下唇を、少しかさついた親指がなぞった。



「──ッ、」



瞬間、まるで稲妻のような衝撃が私をつらぬく。

決して逸らすことなく見つめる、瞳の熱に。

じれったく唇に触れる指先が、伝える欲望に。

気づいてしまった私は──カッと顔を熱くさせたと同時に、目の前にある胸板を両手で突き飛ばしていた。



「こ、」

「っし、失礼、します……っ!」



不意打ちの反撃に数歩よろけた久浦部長が、たぶん私の名前を呼ぼうとしていたけれど……それに構わず、脱兎のごとくこの場から逃げ出した。
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