バッドジンクス×シュガーラバー
……そうなのだ。

約2週間前──俺が、鈍い彼女に自分の気持ちをほとんどさらけ出してしまってから……小糸はずっと、俺のことを避け続けている。

さすがに仕事の話はするし、全力ダッシュで逃走まではされていないが。牧野の言う通り、異動したての頃よりも視線が合わず、よそよそしい態度ばかりとられている。

周囲の同僚たちは『なぜか久浦部長に対してだけ、以前の小糸さんに戻ってしまった』という認識で、さらにそれが、少しずつあたりまえのこととして受け入れ始められているところが面白くない。

俺自身を、完全に拒絶しているわけではないのだろう。

表情から推測するに、単に『どうしたらいいのかわからない』という戸惑いからああなっているようにも思える。

このまま、じっくり時間をかけて籠絡すれば、あるいは──……。

深く背をもたれてさせていた体勢から半身を起こし、今度はデスクの上に両肘をついて指を組む。

組んだ部分で口もとを隠すようにしながら、傍らの牧野にだけ聞こえる音量でボソリとつぶやいた。



「……社内恋愛の先達として、おまえに教えを乞うべきかな」

「冗談やめてくださいよ。百戦錬磨で経験豊富な久浦部長殿に、自分が教えられることなんてありません」

「百は言い過ぎだ」

「『経験豊富』は否定しない……」
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