バッドジンクス×シュガーラバー
この件で、最初のキスは本当に戯れのようなものだったのだと、嫌というほど思い知った。

キスがあんなに……恥ずかしくて淫靡で気持ちのいいものだなんて、思いもしなかった。



『……小糸、おまえは先にひとりで戻れ』



一体どれだけの時間そうしていたのか。散々私の唇と口内を味わった久浦部長が、不意に唇を離してそう言った。

部長の大きな手は、未だ私の左頬と後頭部にある。

ぼーっとする頭のせいで、かけられた言葉の真意が掴めない。視界が滲んでいるのは、自然と浮かんだ涙の膜が張っているからだ。

荒い呼吸を繰り返しながら、無言で目の前の人物を見つめる。



『もしもこのまま、一緒にいたら……俺はこれ以上、何をするかわからない』



反射的に、ビクリと震えてしまった。

そんな私を見て久浦部長が苦笑する。



『俺は少し、頭を冷やしてから行く。……まあ、おまえも今、とてもじゃないが人前に出せない顔をしてるけど』

『え……』



思わず声を漏らすと、部長は意地悪に口角を上げた。
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