バッドジンクス×シュガーラバー
たぶん侑子は、怒っているのだと思う。久浦部長の強烈な幸運に頼る、私の甘っちょろい考えを見抜いて。

頭ではわかっているのだ。いくら部長が強運体質だといっても、私のはた迷惑なジンクスの前でそれがいつまで保つかはわからない。

だから本当はもっと、警戒しなきゃいけないのに。今の自分は、久浦部長がくれた言葉を素直に受け入れたいと思ってしまっている。



『だから、俺のことは他の男にしているように避けるな。普通に目を見て、普通に話せばいい。かかわることに、罪悪感なんて持たなくても──周りを守っておまえばかりが傷ついたりしなくても、いいんだ』



……うれしかった。

自分を責める気持ちは変わらなくて、そうすることは当然だと受け入れていたとしても──あんなふうに言ってくれる存在がいてくれたことを、どうしようもなくうれしく思ってしまったのだ。

久浦部長の前では、肩の力を抜いても許されるのだろうか。

自分を押し殺して、うつむかなくてもいいのだろうか。

私のこんな考えは、甘えたものだとわかっているのに。それでもどうしたって、期待してしまう。



『そのジンクス、俺が変えてやる』



大嫌いな自分の一面を、なんでもないことだと笑い飛ばしてくれる──圧倒的で魅力的で、奇跡的なヒトの存在に。
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