バッドジンクス×シュガーラバー
昔から貫禄があるだの強面だの言われてきた地顔は、コンタクトにする以前視力が悪かった頃の癖──目を細めて対象をよく見ようとするため、眉間にシワが寄る──が染みついた結果、ここ数年でさらに険しくなってしまったと自覚している。

まあ、この歳で部長という役職をもらっている自分にとっては、上下ともからナメられないためにもこの見た目はある意味都合がいいといえるのかもしれないが。

……歓迎会、な。

先ほど聞いた単語を頭の中で反芻すると、同時に、とある人物の姿が思い浮かんだ。

まさに今日行われる、その歓迎会の主役ともいえる社員のひとり。

人事異動のため俺が在籍するデイリーフーズ部へ今月初めにやって来て、直属の部下になった若い女。

こんな就業時間真っ只中の社内で、ひとりの女のことを考えているなんてらしくない。

若干自分に呆れながら、オフィスのドアノブに手をかけて何気なく引いた。

妙にドアが軽いなと、思った次の瞬間──すぐそばで「ひゃ……っ」と小さく情けない悲鳴が聞こえ、胸のあたりにぽすんと何かが飛び込んできた感触がして固まる。

ドアノブを持ったまま驚いて目線を下げれば、そこには、たった今俺の身体にぶつけたらしい顔面を押さえながら立ち尽くす小柄な女性社員がいて。

そいつがまさに、今の今まで自分が思い出していた人物本人だったものだから、不覚にも心臓が大きくはねた。



「っ悪い、小糸。大丈夫か?」



なんとか平静を取り繕い、声をかける。

小糸はハッとしたように顔の中心から手をどけると、頬を染め恥じた様子でこちらを見上げてきた。
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