バッドジンクス×シュガーラバー
5:激励ミルクティー×お見舞いエクレア
「歓迎会の夜はご迷惑をおかけして……すみません、でした」
自販機の前に立つその人の顔をまっすぐ見られないまま言って、深々と頭を下げた。
5秒ほど待ってみたけれど、何のリアクションもない。
私はおそるおそる、顔を上げる。
「あ、あの、久浦部長……?」
やっぱり怒っているんだろうか、と考えながら小さく呼びかけた私を、久浦部長はなぜか真顔でじっと見つめていた。
一身に注がれる眼差しに思わずだじろぐと、それに気づいたらしい部長がハッとしたようにまばたきする。
「ん、ああ。別に、気にしなくていい」
そう言って、久浦部長は私から視線を逸らす。
思いのほかあっさりとした物言いに、気合いを入れてこの場に立った私は少々拍子抜けだった。
そんな私の目の前で、部長は自販機にICカードをかざし缶コーヒーを購入している。
精悍な久浦部長の横顔をぼんやり眺めながら、思い出すのは昨日まであった大型連休前──デイリーフーズ部とマーケティング部合同の歓迎会があった、あの夜のことだ。