俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「性懲りもなく口説いてるのか?」
「そうするつもりだったけど、完璧に振られたよ」
肩にかけたバスタオルで髪を乾かしながら現れた陽に、博人は苦笑する。
「御子柴さん! お土産のワインだそうです」
「ああ……。というか、何招き入れてんだアホ猫」
「でも御子柴さんは家にいるし、何より美味しいワインですよ? これから夕飯だし、いただいたら御子柴さんが喜ぶかなと思って」
純粋に、陽の為の行動だったと言われては文句を続けることはできなくなる。
それでも相手は博人だ。
隙を見せるべきではないと陽が疑いの眼差しを博人に向けると、博人は昔よく見せてくれていた柔らかな笑みを浮かべた。
「陽、俺は彼女の義兄さんになることにしたから、警戒は不要だよ」
「わあああっ! 社長!」
「ハハッ、悪い悪い。それと、陽にも」
「俺?」
少し訝し気に小首を傾げた陽に、博人は申し訳なさそうに眉を下げ微笑んだ。
「悪かった。ムキになって。彼女のことだけじゃなく、色々と」
それは、ふたりの関係がギスギスしたものに変わってから初めてされた謝罪。
まさか、紬花がきっかけで謝られるなど思ってもいなかった陽は目を丸くする。
陽より上に立ち、見下ろすことに執着していた兄が、今、同じ目線に立ってくれている。
その事実は、陽の中に張り巡らされている警戒心を少しずつ緩めていった。