俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
そうして、翌日──。
「御子柴さん! 良かったらこれ、デザートに食べませんか?」
「なんだ?」
「駅前にある人気店のシナモンロールです。今日は早めに上がれたので、ひとっ走り買いに行ってきました」
陽の調子を良くし、微笑みを拝むべく、紬花はさっそく行動を開始した……のだが。
「シナモンは苦手なんだ。お前が食べろ」
スイーツを用意してみたものの、好みではなかったために失敗。
それなら別の方法でとネットで検索してみたところ、一日の疲れをマッサージでほぐし、癒すという一文を発見した。
これだと思い、コーヒーをお代わりしようとアトリエから出てきた陽を捕まえる。
「御子柴さん、マッサージしましょうか?」
「なんだいきなり」
「肩とかお疲れかなと思いまして」
まだ右腕は包帯で固定されたままだ。
もう三週間ほど左腕を酷使している状態となれば、腕や肩に疲れが溜まっているだろう。
懲りがほぐれたら、体だけでなく心だって軽くなるはずと、紬花は腕を捲った。
しかし。
「必要ない。そんなことより、新規クライアントのデザイン画を確認したが、スカートの曲線のカーブがきつすぎる。少し緩めて柔らかさを出した方がクライアントの雰囲気にも合うんじゃないか? 見直しておけよ」
「は、はい! ありがとうございます」
断られたうえ、仕事の話を出されてはマッサージを強行することはできず、紬花は仕方なく引き下がり、アトリエに戻る陽の背を見送る。