俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
──もしもあの時、次も会おうと約束をしていたら。
陽も紬花も、そう後悔し、今日まで過ごしてきた。
七年という歳月は決して短くなく、互いの面影を朧げなものに変えた。
しかし、こうしてまた再会を果たせたことを、初恋の相手だとは知らず、また恋に落ちたことを、紬花は奇跡だと感じ、頬をゆっくりと滑る陽の指を右手でそっと包む。
「鳴瀬だと名乗らず、御子柴だと告げておけば良かったな」
「本当ですよ。でも、もういいです。またこうして会えたから」
運命の赤い糸。
目に見えないそれが繋がっているのだと無邪気に声に出して喜ぶ年齢ではないけれど、もしも本当に赤い糸があるならば、だからこそこうして再び巡り逢えたのだろう。
「御子柴さん」
紬花は、自分の小指と陽の小指をそっと絡めて微笑む。
「私も、あの日、あなたに心を奪われて、会いたいとずっと願ってたんですよ」
流行りの歌を歌えない紬花に合わせて選曲してくれたり、ドリンクバーの使い方がわからず困ってる紬花をバカにせずサポートしてくれた。
時々見せる優しい笑みが魅力的で、別れ際に交わした握手が温かくて。
また見たい、また触れたいと焦がれていた。