基準値きみのキングダム


私の体を支えたまま、深見くんは「な?」と顔を覗き込んでくる。



透き通った瞳に、きめこまやかな肌。

幻覚にしては解像度が高くて、ようやく、なるほどこれは現実、と頭の整理がついて。





「なんで!? ……っけほ、こほっ」





驚きの大声を上げたついでに咳き込んでしまう。


苦しくて涙目になった私の背中を、深見くんがさりげなくトントンとさすってくれる。



落ちつきを取り戻して、同じ過ちを繰り返さないように、今度は声のトーンを落として尋ねた。





「なんで、深見くんが……ここに、いるの」

「スーパーで奈央に偶然会った」




深見くんの後ろで、なにやら買い物袋をがさごそ漁っている奈央に向けると、奈央はこくんと頷いた。



聞けば、スポドリやゼリーを買うためにスーパーに寄ったところ、深見くんとばったり出くわしたらしい。




「学校休むとか珍しいし、気になってた。そしたら、寝込んでるっていうから」





だから、来たの?

それだけの、理由で?





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