基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒



雑炊とりんごを綺麗に食べ終えると同時に、ようやく涙が枯れた。

突然、こんなぼろぼろに泣きじゃくって、訳も分からないはずなのに、深見くんは何も言わなかった。



ごちそうさま、と手を合わせると、泣き疲れたせいか、眠気がふいに襲ってくる。


いくらなんでも寝てばかりじゃ……、と睡魔と闘っていると、そんな私に気づいた深見くんが。




「じゃ、俺はそろそろ帰るな」




そう言って立ち上がる。

その瞬間、ぱちんと眠気が弾け去った。




「俺いたら、ゆっくりできないだろうし。あ、うちから持ってきた豆腐、廃棄直前のやつだけど、冷蔵庫に入れてるからよかったら────っ、え」




深見くんの言葉尻が不自然に途切れる。

私が、深見くんの手をぎゅっと握ったせい。


……だって、深見くんが、帰ろうとするから。
離れていこうとするから。





「……杏奈?」




きょとんとしている深見くんを、見上げる。
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