基準値きみのキングダム


さっき泣いてしまったせいで、きっと私の目はまだ赤く潤んでいる。



今日は、全然いつも通りじゃない。

どれもこれも、全部、ぜんぶ、熱があるせい。



熱のせいにしてしまえるから、“それ” はするりと、びっくりするくらい簡単に口から飛び出した。




「もう、帰っちゃうの……?」




甘えたがりの、本音。

じっと深見くんを見つめると。




「ん゛っ」

「……?」




濁点付きでむせた深見くんの耳が、じわりと赤くなる。


首を傾げると、さらに顔が朱に染まって、深見くんは慌てたように手の甲で表情を隠した。


上手く伝わらなかったのかもしれない、と焦って、私はまた口を開いて言葉を重ねる。




「あの、もうちょっとここにいてほしい、の」




寂しくて、心細いから。
ほんとうは、誰かに傍にいてほしい。

その誰かは、深見くんがいい。




「っ、あ゛ー……、やば」




顔を覆ったまま、深見くんがベッドの傍に座りこんだ。

へたりこむ、と言った方が正しいかもしれない。





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