基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒



しばらくして、ようやく涙が止まる。


目のふちに残った最後のしずくは、深見くんが指を添わせて吸いとってくれた。


それが、恥ずかしくて、くすぐったくて。

きゅっと、唇を結んだら。




「杏奈。俺にはさ、何でもわがまま言っていいよ」

「わが、まま……」

「その方が、彼女って感じで嬉しいから」




彼女、のワードにぴくっと肩が跳ねた。

そっか、私、深見くんの彼女なんだ……。



そわそわと落ち着かない気持ちで考える。

“わがまま” って、例えば何だろう。


言っていいよ、とうながされると逆に、塩梅が。





「難しい……」

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