基準値きみのキングダム
♡
𓐍
𓈒
しばらくして、ようやく涙が止まる。
目のふちに残った最後のしずくは、深見くんが指を添わせて吸いとってくれた。
それが、恥ずかしくて、くすぐったくて。
きゅっと、唇を結んだら。
「杏奈。俺にはさ、何でもわがまま言っていいよ」
「わが、まま……」
「その方が、彼女って感じで嬉しいから」
彼女、のワードにぴくっと肩が跳ねた。
そっか、私、深見くんの彼女なんだ……。
そわそわと落ち着かない気持ちで考える。
“わがまま” って、例えば何だろう。
言っていいよ、とうながされると逆に、塩梅が。
「難しい……」