基準値きみのキングダム
♡
𓐍
𓈒
「杏奈、餃子包むのやけに上手くない?」
「慣れだよ。深見くんのは……なんていうか、芸術的だね」
「苦しまぎれに褒めんなよ」
家賃の安さだけが魅力のおんぼろアパート、206号室、私の家で奈央と京香も含めた4人で餃子パーティーをして。
ホットプレートいっぱいに焼いた餃子も、空っぽに平らげたら。
「じゃ、俺はそろそろ」
ほんとうの、お別れの時間。
奈央と京香はリビングに残っているけれど、私だけ玄関まで向かう。
それでも足りなくて、靴を履いて階段のところまで着いて来てしまった。
手を振って、深見くんが背を向ける。
その背中を見送ったあと、部屋に戻ろうと、くるり方向転換した次の瞬間。
「杏奈」