基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒




「杏奈、餃子包むのやけに上手くない?」

「慣れだよ。深見くんのは……なんていうか、芸術的だね」

「苦しまぎれに褒めんなよ」




家賃の安さだけが魅力のおんぼろアパート、206号室、私の家で奈央と京香も含めた4人で餃子パーティーをして。


ホットプレートいっぱいに焼いた餃子も、空っぽに平らげたら。




「じゃ、俺はそろそろ」




ほんとうの、お別れの時間。


奈央と京香はリビングに残っているけれど、私だけ玄関まで向かう。

それでも足りなくて、靴を履いて階段のところまで着いて来てしまった。



手を振って、深見くんが背を向ける。

その背中を見送ったあと、部屋に戻ろうと、くるり方向転換した次の瞬間。




「杏奈」





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