売れ残りですが結婚してください
「一緒に美術館に行くには良しとしよう。もしかしたら翠ちゃんにはこれが最初で最後になるかもしれないからね」

翠に許嫁がいると言うことは今後は自由がきかないかもしれない。

最後に思い出を作るものいいかもしれないと思ったからだ。

「だけど、何か金銭を要求するようなことを言われたり、知らないところに行こうとか誘われた時には……」

「はい」

翠が真剣な眼差しで石神の話に頷く。

「私に連絡しなさい。翠ちゃんをたぶらかすような男だったら私がやっつけてあげる」

石神先輩って男の人を投げ飛ばすような人なのか?と翠は少しビビった。

「わかりました。そうさせてもらいます」

すると石神が何か思い出したかのように「あっ!」と声をあげた。

「どうしました?」

石神はさっきまでのたくましい顔かた乙女の顔に変わった。

「もしよかったらそのイケメンの写真撮ってきてよ」

「写真ですか?」

「だって翠ちゃんでもドキッとしちゃったんでしょ?シュウって人。私もちょっと見たいな〜って思って」

翠はそんな高等な会話がシュウとできるのか不安だったが、約束はできませんがと前置きした上でそのリクエストを引き受けたのだった。

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