売れ残りですが結婚してください
育は娘と一緒にご飯を食べると帰って行った。

翠はベッドに横になりながらウェディングドレスを着た唯の顔を思い出していた。

「唯姉綺麗だったな〜」

きっと素敵な結婚式になるんだろうなと思うと同時に翠は自分の結婚式を想像してみる。

だが許嫁の顔を見たことのない翠は全く想像ができない。

でももう一度……と、今度は目を瞑って想像してみる。

真っ白なチャペルのバージンロードを父の忠明と歩く翠。

そして、祭壇の前で立つタキシード姿の男性は……。

（ええ？！）

翠はガバッとベッドから飛び起きた。

（なんで？なんでシュウさんの顔が浮かぶの？）

許嫁の顔を知らない翠の頭に浮かんだ新郎の顔はシュウだったのだ。

（知ってる男の人がシュウさんだけだからよ）

翠は自分に言い聞かせていた。

だが翠は異常なほどにドキドキしていた。

それは想像していた新郎の顔が唯姉のように幸せそうだったからだ。

私も誰かに唯姉のようなとびきりの笑顔を向けれる人が現れるだろうか？

いや、そうじゃない。

とびきりの笑顔を向ける人は許嫁にでしょと一人でツッコミを入れていたその時だった。

ベッドの横に置いてあったスマホが鳴った。

翠は驚いてスマホを確認した。

シュウからメールがきたのだ。

《次のお休みにドライブに行こう》

短いメールだったが翠はまだドキドキが収まらず、スマホを見つめたまましばらく返信できなかった。

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