求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
極甘御曹司に愛でられました
雨の日は大切なものを失くしそうで怖い。

どんなに強く握り締めても濡れた指先からすり抜けてしまいそうで――。

子供の頃、そんな風に怯えていたと話したからだろう。肌を滑らす指先は心までいたわるように優しい。

「俺に全部預けて……」

熱っぽい眼差しをくれた彼が身を沈めてきた。久々の感覚に身体が強張り、頬を紅潮させながらシーツを握る。
すると剥がすように手首を掴まれ、私を眼差す瞳が柔らかい弧を描く。

「好きだよ」

全身にキスの雨を降らせた唇が手の甲に舞い降りる。神聖な愛を誓うような行為に胸がいっぱいになった。

上原(うえはら)課長が私のことを……信じられない……。

同じ会社で働く彼は直属の上司だ。
彼は仕事が出来るだけでなく部下の面倒見も良く、憧れる女子社員は多い。

人気の高さは性格の良さだけじゃない。
優しげな二重の瞳が魅力的な美形で、見上げるほどの長身でスタイルも抜群。

更には物腰が柔らかく紳士的な振る舞いが様になる。いかにもサラブレッドという風情だ。

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