求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
山瀬君が誇らしげな表情で椅子の背もたれに寄りかかる。

いつもなら『コラコラ、契約書を交わすまで安心出来ないよ?』と調子に乗る後輩を窘めるところだ。

まぁ、今日のところは大目に見てやりましょうか……。

後輩に気分よく仕事をさせるのも先輩としての役目のひとつ。
鼻歌交じりにパソコンを立ち上げる山瀬君に『山瀬君、ガンバ!』と、心でエールを送る。そこで私のデスクに影が差した。

ゆらりと顔を上げると同僚の高木(たかぎ)さんが無表情で佇んでいた。

ラグビー部出身で体格のいい彼にそれをされると少々怖い。

「港家電の販促イベントの件、どうなってる?」

「あっ。それなら、担当者の確約が取れたところです」

港家電は港モールと同じ企業グループに属する家電量販店だ。
営業窓口は港モールと同じく、私と山瀬君のふたり。

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