政略結婚は純愛のように~狼社長は新妻を一途に愛しすぎている~
 奈々はひぃと声をあげて、長坂はちっと舌打ちをしてそれぞれ自席へ戻る。
 由梨も慌ててブラウザを閉じた。
 加賀は嫌味を言ったもののそれ以上小言を言うつもりはないらしく、後ろにいる蜂須賀にコートを渡すと由梨を見た。

「今井さん、急で申し訳ないけれど明日のレセプションに同行してもらえないかな。」

 由梨はパソコン画面から顔を上げた。

「え…?」

 今日の記者会見での社長就任発表を受けてのレセプションである。
 近くのホテルを会場にして各関係先を招待してのパーティーだ。
 秘書室のメンバーからは、蜂須賀が出席予定だった。
 多忙な加賀の予定は、平素も早朝から深夜に渡ることが珍しくない。
 けれど加賀は女子社員はそれがたとえ気心の知れた長坂であっても夜の予定には同行させることはなかった。
 だから当然明日も蜂須賀のみと思っていたのだが…。
 由梨は戸惑いながらも頷いた。

「わ、わかりました。」

 イレギュラーだとはいえ仕事なのだから断るわけにはいかない。

「頼んだよ。…服は準備させるから君は
早めに出て。」

 そう言い残すと僅かに微笑んで、社長室の方へ消えていった。
 長坂が、そういえば今井さんも今井家のご令嬢なのよね、と意味ありげに呟いたのが聞こえたが、由梨は気がつかないふりをしてパソコンの画面をじっと見つめた。
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