マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
料理再開から三十分後。
キッチンカウンターの上には、作った常備菜がずらりと並んでいた。

鶏つくね、隠元の肉巻き、大根の煮物、小松菜の煮浸し、塩ゆでブロッコリー。私が切ったじゃがいもは、ツナと和えた粉ふき芋になった。

「小料理屋さんみたい……」

ポツリと漏らした独り言に、

「じゃあ今夜はこれで一杯やるか?」

「平日用の作り置きじゃないんですか?」

「全部食べきらなければいいだろう?ちょうど良い日本酒もあるし…」

「日本酒……」

平日はビールを軽く飲むだけだが、週末は他のお酒も嗜んでいる私達。高柳さんとはお酒の好みが合うようだ。

「夜は冷えるし、鍋もいいな」

「お鍋…日本酒……」

思わず口の中に湧き出た生唾をゴクンと下す。それを見た高柳さんが、くくっと笑いを噛み殺す。

「枝豆も買ってあるぞ」

「………お願いします」

美味しい料理とお酒に枝豆が付けば、全面降伏するしかない。
コクンと下げた頭をポンポンと軽く撫でられた。


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