マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

《二》





強い渇きで意識が浮上する。
重い瞼を持ち上げると部屋は薄暗く、今が何時なのか全く分からない。少なくとも昼間ではないことは確かだ。

(のど、乾いた……お水……)


起き上がろうと体に力を入れるが、まったく入らなかった。

「目が覚めたのか?」

空耳かと思った。ここで聞こえるはずのない声が聞こえたから。
声がした方へゆっくりと首を回すと視界に入ったその人に、空耳でも幻聴でもないことを知った。

「た、」

「気分はどうだ?」

私の動揺など気にも留めずに、こちらを覗き込んでくる。
彼は同じベッドで横になっていた。

「な、なな、なんで」

乾いた口から勢いよく言葉を発しただけなのに、クラリと目の前が回った。

「落ち着け。具合がひどくなるぞ」

そう言って、彼は私の額に手のひらを当てた。

「熱がまだ高いな。喉が渇いただろう。飲むものを持ってくるから待ってろ」

そう言い残すと、ベッドから降りた高柳さんは部屋から出て行った。
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