マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

「ただいま帰りました」

玄関を開け中に入りながら声を掛ける。
脱いだ靴を整えキッチンにつながる扉を開くと、そこには予想通りのエプロン姿があった。

「おかえり」

「……ただいま、です」

ぎこちなく返事を口にする。このやり取りは三回目。まだ慣れない。

「夕飯もう出来るから、着替えて手を洗って」

「はい」

キッチンから香る美味しそうな匂いにお腹が反応しそうになって、急いで自分の部屋へ滑り込んだ。


部屋着に着替え手を洗ってからリビングに戻ると、二人掛けのダイニングテーブルの上には湯気を立てた料理が並んでいる。

「何か出来ることありますか?」

「じゃあ冷蔵庫からビールを出して」

「はい」

冷蔵庫の扉を開くと、昨日まで無かったものが目に付いた。

「瓶ビール…」

「ああ、それを出してくれるか」

言われた通りにドアポケットからそれを出して、テーブルに持って行く。その私の後ろからエプロンを着けた高柳さんがやって来る。彼は手に持っていたご飯茶碗をテーブルに置くと、私の向かいに腰を下ろした。
< 97 / 336 >

この作品をシェア

pagetop