蝉彼岸
蝉と親戚の声は止まることを知らない。
葬儀前から続いている噂話に飽きることは無いのだろうか。
終始無表情でいる私の隣にお義母さんがそっと座った。
「唯花さん、ほんとごめんなさいね」
ハンカチで目元を押さえる彼女は私を抱き寄せた。
私はお義母さんにきつく握られているハンカチを凝視した。それは、夫の鞄から度々でてきた、あのハンカチだ。彼岸花と蝉の刺繍。
「お義母さん、謝るなんて、そんなことしないでください
私なら大丈夫ですよ」
お義母さんにいま出来る精一杯の笑顔を見せた。それを見た彼女はほっと安心したようだった。
なんの偶然か、あの日の快晴は今日も現れるようだ。
柩の中の黄色い彼岸花が光っているように見えた。私は白の彼岸花を彼の顔元にそっとそなえた。
彼岸の彼の指輪と空蝉の私の指輪を交換する。冷たくなった彼の唇に私のそれをそっと押し当てた。
「はじめから気づいてたよ、ばか」
柩の彼は微笑んだように見えた。
葬儀前から続いている噂話に飽きることは無いのだろうか。
終始無表情でいる私の隣にお義母さんがそっと座った。
「唯花さん、ほんとごめんなさいね」
ハンカチで目元を押さえる彼女は私を抱き寄せた。
私はお義母さんにきつく握られているハンカチを凝視した。それは、夫の鞄から度々でてきた、あのハンカチだ。彼岸花と蝉の刺繍。
「お義母さん、謝るなんて、そんなことしないでください
私なら大丈夫ですよ」
お義母さんにいま出来る精一杯の笑顔を見せた。それを見た彼女はほっと安心したようだった。
なんの偶然か、あの日の快晴は今日も現れるようだ。
柩の中の黄色い彼岸花が光っているように見えた。私は白の彼岸花を彼の顔元にそっとそなえた。
彼岸の彼の指輪と空蝉の私の指輪を交換する。冷たくなった彼の唇に私のそれをそっと押し当てた。
「はじめから気づいてたよ、ばか」
柩の彼は微笑んだように見えた。