異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
――明日は、テツシバへ行って小豆の様子を見てこよう。できている分は、採ってこないと虫に食われて中身がカラカラになってしまう。

リボンとレース、膨らんだ下スカートにかなり開いている胸元など、美しいドレス姿が鏡に映っているが、メグミは、次はやはり小豆を使ってみようとそれしか考えていない。

「メグミ! どうなのよ。侍女さんたちが『いかがですか』と聞いているでしょう? 『出来上がりました』だそうよ」

ジリンが着付けのために派遣してくれた侍女が三人もいた。服ひとつに信じられない話だが、貴婦人のドレスは脱着がひとりでできるようなものではなかった。

強い口調のサユリの様子に驚いて、急いでその場の状況を眺めて、メグミは鏡に映った自分の姿に唖然とした。

青系のドレスだった。白いレースがとても映えているが、アクセントの赤いリボンに仰天する。
「か、母さん……これなに。これで動けるものなの?」

「着物と同じようなものと思えばいいでしょ。茶道をやっていてよかったわね。お茶会のつもりで動くといいかもしれないわ」

「あれ? 母さんは着替えないの?」

サユリは、ジリンが屋敷用にと揃えたゆったりとしたネグリジェのような軽いドレスのままだ。疲れたらそのまま寝られるようにという、いわば病人のための服だった。

色合いがクリームなので目にも優しいし、胸や袖のところに飾りがあるので、着ても楽しいという優れものだった。しかし晩餐に着用するものではないだろう。
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