異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
廊下を歩くコンラートの歩調が次第に速くなってくる。

行き合う女官や侍従たちが、ぎょっとした顔で端によって彼のために前を開けた。

どこから現れたのか、ジリンがコンラートの傍に付く。ジリンもまた、厳しい顔つきをしていた。コンラートは前を向いた状態でジリンに指示する。

「メグミの小豆を外にばら撒いた奴を見つけろ」

「はい。許せませんな」

「許せない。メグミの指先が真っ赤だった。犯人は極刑にしてもいいくらいだ」

激しく言い切るコンラートに対して、ジリンは目線を泳がしながら穏やかそうな声を出す。あくまでも作った穏やかさだったが。

「豆を庭にばら撒いたら極刑ですか。えー、それでは今までの王たちと同じですが」

ピタリと足を止めたコンラートは、ジリンに顔を向けて皮肉げに笑う。メグミには決して見せない黒獣王の顔だ。

「俺の中には、残虐で冷酷な血が間違いなく流れている。ほんの半年前までは俺に必要以上近づかなかった公爵なら思うところがあるんじゃないか? なにかの切っ掛け一つで豹変するかもしれないってことを、予想しているんだろう?」

「思うところならありますな。もっと早くに、あなた様がみたらしだんごに食いつく姿を見たかったな――と。この年になって、近づかねば本性が分からない人間もいると実感することになろうとは、驚きでしたよ」

「俺もお前がテツシバへ来ているとは思ってもみなかったぞ。元々、テツシバのことは調べようと思っていたが、エディにみたらしの話を聞いて、食べたくて堪らずに行ったんだ。まさか、宰相と鉢合わせをするとはな」
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