異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
――必要なことは勝ち負けではないはず。

彼女の中には、コンラートの目論みに応えたいという願いがある。

しかしそれだけでなく、和菓子を喜んでもらいたい、覚えていてほしい、もう一度食したいと望んでもらえたらという思いがあった。

――この世界で、他にはないものとして和菓子を作っている。人の記憶にも残らないものにしてしまいたくない。

ふらりと動いて、自分の部屋へ戻ってゆく。ドアを開けて中に入ると、どさりとベッドに腰を掛けた。じっとして動かず、どうにかできないかと考えを巡らせる。
< 175 / 271 >

この作品をシェア

pagetop