異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
コランは、テツシバの何もかもに意識を向けて細かく見てくる。そして質問責めにする。たとえば、たまに口に載せた歌であっても。

メグミはため息をつきそうになるのを抑えて笑って答える。

「故郷の歌です。祖母に聞いたんですが、軽い感じが好きなので、だんごを作るとき、つい口から出ちゃうんですよ。でも、元の歌は三兄弟なんですけどね。うちは四個刺しですから、四姉妹に変えてます。さ、外へ出てください」

「今日は朝の時間が少し空いたから来たんだが、まだなのか。しょうがない、他を回って来るか」

「あ、待ってください。他へ行くなんて、言わないでください。用意しているところを見られたくないっていうか、出来上がりこそが大事で、あのっ」

思わず引きとめてしまった。

他へ行かれてしまうのは困るから慌てて近くの濡れタオルで手を拭いたが、かといって客だから引き留めたいというのとも違う。

体の向きを替えていたコランはくるっと振り返ると、相好を崩す。少し悪戯っぽい雰囲気が漂った。

「メグに引き留められるんじゃ、動けないな。外で待つさ」

「うぅ……」

他へ行くというのは、メグミに止めさせるための引っ掛けだったのか? 得意げに言われると、ちょっと悔しい。
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