異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
小豆事業が少しずつ動いてゆくことで、明るい未来を髣髴とさせる。
けれど光射す陰には暗い闇が巣食うものだ。例えば、春祭りの話で盛り上がる一方で、王城の一室では暗い謀が囁かれたりする。
ベルガモットが、後見役のグレイ公爵に、「もう後押しはしない」と言われたのもその部屋だった。
「理由をお聞きしてもよろしいですか」
「あの娘を叩き潰せなかっただろうが」
「メグミの作る和菓子は、この国にはないものでした。彼女の菓子作りに対する真剣さも、出来上がる和菓子も素晴らしいものです。ヴェルム王国への貢献も期待できます。私情で潰すのはあまりにも惜しいと思われませんか?」
グレイの居室に呼び出されたベルガモットは、ソファに座る公爵に向かって、今までになく強く主張した。しかしそれが余計にグレイを苛立たせる。
「たかが菓子職人ではないか。何が国に貢献だ。あのような者が、大きな顔をして王城を走るのを見るのはもうたくさんだ。しかもあの娘は陛下のお気に入りで、ジリンが後見なのだぞ。いずれジリンが養女に迎えて、陛下との婚姻を唱えるようになる」
「まさか」
「政争とはそうしたものだと分からんのか。もう、いい。私の命令が聞けないなら、お前は用無しだ。近い内に罷免の辞令を出してやる。春には職を失うと思え」
ベルガモットは無言で頭を下げて、グレイの部屋を退出した。
けれど光射す陰には暗い闇が巣食うものだ。例えば、春祭りの話で盛り上がる一方で、王城の一室では暗い謀が囁かれたりする。
ベルガモットが、後見役のグレイ公爵に、「もう後押しはしない」と言われたのもその部屋だった。
「理由をお聞きしてもよろしいですか」
「あの娘を叩き潰せなかっただろうが」
「メグミの作る和菓子は、この国にはないものでした。彼女の菓子作りに対する真剣さも、出来上がる和菓子も素晴らしいものです。ヴェルム王国への貢献も期待できます。私情で潰すのはあまりにも惜しいと思われませんか?」
グレイの居室に呼び出されたベルガモットは、ソファに座る公爵に向かって、今までになく強く主張した。しかしそれが余計にグレイを苛立たせる。
「たかが菓子職人ではないか。何が国に貢献だ。あのような者が、大きな顔をして王城を走るのを見るのはもうたくさんだ。しかもあの娘は陛下のお気に入りで、ジリンが後見なのだぞ。いずれジリンが養女に迎えて、陛下との婚姻を唱えるようになる」
「まさか」
「政争とはそうしたものだと分からんのか。もう、いい。私の命令が聞けないなら、お前は用無しだ。近い内に罷免の辞令を出してやる。春には職を失うと思え」
ベルガモットは無言で頭を下げて、グレイの部屋を退出した。