異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
メグミは、この際だから強く言っておくつもりで箸を置いた。

「母さん。あの人はどう見たって貴族階級だよ。身分違いだって。着ているものは町の男たちの服に似せてあるだけで、すごく良いものだと思わない?」

「それはね。私もそう思うわよ。だけど、こういう場所をふらふらしているんだから、たとえ貴族の息子でも、邪魔にされてしまう五男とか六男なのよ。テツシバを継いでほしいとは言わないから、なんとかメグミを嫁にもらってくれないかしら」

“嫁にもらって”というのがそもそもこの世界には合わない。

おまけに、メグミには結婚する気はない。

お茶を淹れようと無言で立ち上がったメグミは、サユリがこういうことを言う理由も分かるので端からその望みを叩き落としてしまうのは躊躇われた。かといって、コランとのことをあれこれ画策されるのも困ってしまう。

サユリは夢見がちな顔をして言葉を重ねる。

「コラン様は頼りがいがありそう。それにあの人は絶対スイーツ男子よ。メグミには、もってこいじゃないの」

「そういう問題じゃないって。大体、気持ちがついて行かないのよ。私も、コラン様だって」

「そんなことないわよー。メグミは、コラン様には他の人とは違う態度を取るじゃない。コラン様もまんざらでもない様子だわ。身分違いが何なのよ。愛は勝つっていうし、どう?」

何とも古いフレーズが出てきたものだ。
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