君の子守唄
正直…………ショックだった。

捨てられ、手も出されてきた寧々が。

まさか、母親の愛情を求めてるとは思わなかった。

『怖い』『帰りたくない』とは思っても………。

たこが出来る程指を吸って、淋しさを紛らせていたなんて。

「分かった。
兄貴や洋介とも話してみるけど………。
俺達は専門外だから、咲と彩ちゃんも相談にのってくれる?」と伝えた。

列に戻ると

彩ちゃんが手にしていたイルカのクッキーに

目をキラキラさせている。

「ペンギンさんのエサやりが済んだら、みんなで食べようね!」

寧々は『みんなで』という言葉が、大好きだ。

「うん!
みんなで食べよう!!」

ぬいぐるみや他のお土産は、後で一緒に買うことにした。

ペンギンのエサやりは

意外に凶暴らしくて、大人と一緒にと言われた。

寧々が選んだ相手は…………

咲と彩ちゃんだった。

やっぱり、母親の愛情を求めているのか?

不安になった俺を裏切り

「よう兄ちゃんもあき君もパパも
ケンカばかりするからダメ!
仲良しの彩ちゃんと咲ちゃんにごほうび。」だそうだ。

確かに兄貴と洋介は、寧々を挟んでライバルだからな。

「子供って、よく見てるでしょ!」

「だから、小手先の愛情じゃあダメなんだよ!
真剣に向き合わないとね。」と

寧々と手を繋いで、楽しそうに歩いて行く二人に教えられた。

やっぱり二人は、先生なんだなぁ。

普段の二人は、彼氏に甘えて全く先生らしくないが………

これなら、たんぽぽ幼稚園は安心だな。

悠人の運営する幼稚園の将来を想像していた。
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