君の子守唄
水族館の後半

俺が考え込んでいたことに気づいていたメンバーは。

やっと話す気になったかという表情を見せた。

「寧々が…………母親の愛情を求めている気がするんだ………。
気づいたのは、咲と彩ちゃんだけど。
言われて、思い返してみて………
俺もそう思った。」

「母親の愛情って!!
だって、寧々を放置して手もあげてたんだぞ。」

兄貴は、分からないというように………声を荒げた。

「………………………………………。」

洋介は、何か言いたそうだが

言葉に出来ないみたいだ。

そんな時、口を開いたのは………咲だった。

「私ね、咲々に両親の愛情がいって…………
ずっと一人ぼっちだったでしょ?
寧々ちゃんと同じ、3歳の時からだったの。
初めは、どうしていないの?って感じで………。
その内、帰って来ないことが分かると悲しくて泣いていて。
でも、泣いても帰って来ないんだよね。
小学生になる頃には、帰って来ないものだと諦めた。
でもね…………。
諦めたはずなのに、参観日になると後ろが気になるし。
外で車の音が聞こえると、窓を覗いてたの。
やっぱり…………待ってたんだよね。
待つのに疲れたとき………
家を出たの。
帰らない人を待つのって、期待した分悲しみも大きいから。
その気持ちにすら蓋をしてて………
私が気づいたのは、ごく最近だけどね。
圭ちゃんや彰兄、幼稚園の先生達と出逢ってからなの。
悲しくて淋しい時は、気づけないんだよ。
幸せで温かい居場所が出来たとき、今までの自分の気持ちに気づけるの。
寧々ちゃんも、今までは分からなかったのかも。
淋しくて悲しくて、待ってばかりだったから。
こうやって、沢山の愛情に触れて安心出来たから
お母さんの愛情を思い出して、甘えてみたくなったんじゃないのかな?
甘えることを覚えたから…………。」

そう言うと、自然に兄貴の膝に抱っこされて微笑んだ。
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