家族の紐帯
親殺し、子殺しのニュースがマスコミを賑わせている時世だ。私が母に下した「罰」が、それらの事件と二重写しになったのだろう。それだけ、あのとき母が命の危険を覚えたのかもしれない。私は、何も言えなかった。母の不自然に強調された言い方に自分の犯した「罪」を非難された心持ちになったのだ。それは、あれはさすがにやりすぎたというつねに水面下にあった反省が母の一言で一気に増幅され水面上に引き上げられたようであった。
「そうだよ。お母さんも気をつけないとね」
などと軽い冗談を飛ばせる余裕はなかった。明らかに母は私を殺人予備軍として見ていた。母の不審気な目を見るたびうすうす感じてはいたが、それはショックだった。その時私は一連の自分の行いが誤りであったことをはっきりと認識した。あれでは母の自覚を促すことはできない。別のアプローチが必要なのだと。祖母に言わせれば、
「哲夫が知ったらどうされるかわからないぞ」
という脅しをかけることによって母を弱らせることができるからある程度効果があったと評価しているようだ。それはそれでプラスかもしれない。だが、正常な思考に欠ける母が私に対する誤解を持ちながら私と接することは決して良いことではない。第一、私が怖いのだ。命の危険を感じた母がどのような行動を取るか分からない。暴力は連鎖する。寝込みを襲われるなんてこともあり得る。それこそワイドショーの格好のネタになってしまうではないか。いやむしろ、こういう問題こそ世間にさらす必要があるように思う。
一方祖母も、私が母を傷つけるやり方を最善とは考えなかった。それは、治療費の問題である。腰痛のときもそうであったがそれを払うのは結局祖母ということになる。(私の収入はたいへんつたない。)そこで彼女は一計を案じた。それを聞いた私は思わず吹き出してしまった。
「今度なんがあっだら、おめば虎刈りさするはんで」母に対しこう言い放ったのだ。
(虎刈りなんて久しぶりに聞いたなぁ。きょうびそんな髪型もないだろう。)と虎刈りになった母の頭を想像するだけで笑いがこみあげてくる私であったが、祖母の語気には本気が感じられた。考えてみると、精神的ダメージは結構大きいかもしれない。肉体的ダメージに比べて費用もかからないし、効果はあるかもしれない。さすがは祖母だと感心した。
「そうだよ。お母さんも気をつけないとね」
などと軽い冗談を飛ばせる余裕はなかった。明らかに母は私を殺人予備軍として見ていた。母の不審気な目を見るたびうすうす感じてはいたが、それはショックだった。その時私は一連の自分の行いが誤りであったことをはっきりと認識した。あれでは母の自覚を促すことはできない。別のアプローチが必要なのだと。祖母に言わせれば、
「哲夫が知ったらどうされるかわからないぞ」
という脅しをかけることによって母を弱らせることができるからある程度効果があったと評価しているようだ。それはそれでプラスかもしれない。だが、正常な思考に欠ける母が私に対する誤解を持ちながら私と接することは決して良いことではない。第一、私が怖いのだ。命の危険を感じた母がどのような行動を取るか分からない。暴力は連鎖する。寝込みを襲われるなんてこともあり得る。それこそワイドショーの格好のネタになってしまうではないか。いやむしろ、こういう問題こそ世間にさらす必要があるように思う。
一方祖母も、私が母を傷つけるやり方を最善とは考えなかった。それは、治療費の問題である。腰痛のときもそうであったがそれを払うのは結局祖母ということになる。(私の収入はたいへんつたない。)そこで彼女は一計を案じた。それを聞いた私は思わず吹き出してしまった。
「今度なんがあっだら、おめば虎刈りさするはんで」母に対しこう言い放ったのだ。
(虎刈りなんて久しぶりに聞いたなぁ。きょうびそんな髪型もないだろう。)と虎刈りになった母の頭を想像するだけで笑いがこみあげてくる私であったが、祖母の語気には本気が感じられた。考えてみると、精神的ダメージは結構大きいかもしれない。肉体的ダメージに比べて費用もかからないし、効果はあるかもしれない。さすがは祖母だと感心した。