ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei's  eye カルテ17:chemical  reaction


【Hiei's  eye カルテ17:chemical  reaction】


手術の準備の段階で
こんなに集中したのは久しぶりだったかもしれない。


その数時間前。
家に帰れないとメールをしても落ちつかなった俺。
甘えてるとわかっていても
伶菜の声を聞かずにはいられなくて。

産科病棟の奥にある非常階段まで移動して
少し肌寒い暗闇の中で携帯電話を耳に当てた。
耳のもっと奥深くに伝わる伶菜の声。


一番欲しかった言葉を紡ぐ彼女に

『傍にいろよ。・・・・・俺の。』

俺は弱い自分自身を晒さずにはいられなかった。
彼女から受け取ったバトンの重さは
自分自身が想像していた以上に重くて。


もしオペが上手くいかなかったら
白川さんやご家族に申し訳ないという想い
それだけでなく
ここまで白川さんを支えてくれた
伶菜にも顔向けができないという想い
そんな想いを
俺ひとりでは背負いきれなかった。
だから弱気を晒してカッコ悪いと思われようが
なんら構わなかった。


『じゃ、行ってくる。』

「行ってらっしゃい。」


帰る場所もちゃんと作ってくれる彼女のおかげで俺は
どんな時でも前に進めるようになる
どこまでも強く
そして
どこまでも愛しい

それが俺の大切な相棒
・・・伶菜

俺もいつか
お前を自分の手でしっかりと支えられる時がくるのだろうか?

そんな時が来るように
努力しなくちゃな

俺を支えてくれてるのは
伶菜であるということが
自分自身でよくわかっていたから・・・・・


「うん。いるよ。・・・ナオフミさんがどこにいても。傍にいる。」


その言葉のおかげで俺は強くなれる


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