ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
目の前では、祐希がメロンを指さしてそれ、ちょうだいと両手を前に出している。
自分の皿の上にあったメロンを手元にあった自分のフォークで突き刺し、彼の前に差し出した。
ついさっきの俺もようにそれを手で受け取らずに、身を乗り出してそれに食いつく彼の姿を俺だけではなく、伶菜も嬉しそうに眺めていた。
「美味しい♪ ママの分もちょうだい♪」
「うん、いいよ。ママ、お腹いっぱいだからどうぞ。」
あんなに行方が気になった彼女のメロン皿は
無事に祐希の目の前に移動された。
そしてメロンの行方を気にしなくてもよくなった俺の気がかりは
なんとかアレルギー検査へと戻った。
メロンのやりとりを通じて、伶菜からアレルギー検査のことを言い出してくると思っていたが、一向にその話題は出てこなかった。
それだけでなく顔色の悪さもやっぱり気になる
『伶菜、やっぱり体調良くない?』
検査のことは触れず、自分が見たままの彼女の様子を
直接本人に伝えた。
そこから検査のことも聞けるだろうと踏んだ上でだ。
食べ終えた食器をトレイに載せていた彼女は
ピタリとその手を止めて
俺の問いかけが聞こえていなかったのかと思えてしまうぐらい
反応がなかった。
『伶菜?』
「あっ、ハイ。なんだっけ?」
『体調、悪くないか?』
再び食器をトレイに載せる手を動かし始めた彼女。
特に怒っている様子でもなさそうだった。
どちらかというと何かを考えているようで。
「大丈夫。だいじょうぶ。昨日、夜遅くまで今度の勉強会に出す論文抄読用の英文を読んでいてちょっと疲れたみたい。」
『そっか。無理するなよ。』
「うん♪」
彼女の隣でもっとパパのメロンもちょうだいとせがむ祐希にお互いが気をとられ、それ以上この話題に触れることはなかった。
でも俺の観察眼が確かだったことを知ったのは
それからしばらく経ってからのこと。